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孝介だより【お話⑦】

はい。こんばんは。
本日もお読み頂きありがとうございます。
孝介です。


いよいよ今日が最終話です。
お付き合いありがとうございました。

それではどうぞ。


青年は電話が繋がるやいなや
怒鳴るような口調で抗議しました。
理由を教えろと。

抗議の電話が身を成したのか
はたまたご縁なのか。
彼はその事務所にお世話になる
ことになりました。

そこで青年は生まれて初めての
経験をすることになります。

彼は自分の歌に迷子になっていました。
思うように歌えない日々にイライラし、
それと同時に見つけられない原因に
モヤモヤもしていました。

そこで青年は半分すがるような
気持ちで、あのオーディションの
審査員をしていた人物に相談に行きました。

相談の回答は凄くシンプルでした。

"ここに来たのも、どうせ自分の
モヤモヤを晴らしたいだけだろ。
そんなんだからダメなんだよお前。
つまんないんだよお前の歌は。
何も伝わらない。聞きたくもない。
辞めちまえ。"

それは青年にとって
後ろから鈍器で殴られたような
衝撃でした。
あれほど自信家だった彼が
一言も言い返せなかったのです。

殺意すら沸いた相手に
手も足も、口すら出せなかった。
青年に残ったのは自分に対する
圧倒的な嫌悪感でした。

その日を境に
彼は何とかあの人に
自分の歌を認めさせようと
考えました。

そして青年が行き着いた答えは

"伝えるとは"

でした。

彼はふと思い出しました。
あの時泣いていた女性のことを。
青年は初めて気付いたのです。
あの女性の頬を伝った涙の大切さ、
そしてその重みに。

彼は自分が今まで振りかざして来た
自信の恥ずかしさを知りました。

それからと言うもの、青年は
伝えるとは何か、言葉とは何か。
日本語とは何か。
毎日毎日その事ばかり考えます。

上手くキレイにカッコ良く歌う。
そんな事は頭のほんの片隅にも
ありませんでした。
下手でも何でも伝わる歌を。
青年の頭の中はあの頃とは
全く逆転していました。

考えては試して、考えては試して、
そんな事を取り憑かれたように
繰り返す日々が続きました。
無意識のうちに数ヶ月が過ぎ、
あっという間に数年が経ちました。

青年はふと気がつくと
1000人の前で歌っていました。
観客は青年の歌で涙し、そして
笑っていました。

それは彼にとって不思議で
感慨深い光景でした。
そしてそれが有難く嬉しくも
ありました。
それと同時に悔しさが
深い所から込み上げてくるのを
感じました。

彼の求めてる"伝える"とは
まだまだ遠い先にあるからです。

この先の青年の歌は
一体全体どのように進んで
どこに向かっていくのでしょう。

それは彼のみぞ知る?

いや、神のみぞ知る?

そんな彼の紡ぐ言葉を
是非皆さんにも見届けて
欲しいなと思いますね。


To be continue…

 


と言うことで、

お話シリーズ最後の筆文字は

それではまた明日。