孝介だより【お話⑤】
はい。こんばんは。
本日もお読み頂きありがとうございます。
孝介です。
それでは続きをどうぞ。
青年の怒りをぶつけるだけの電話が
一転、彼は上京することに決めました。
なんだかんだ青年は乗り気で、
東京には自分よりも上手い人が
五万といるんだ!と、希望に
満ち溢れていました。
オーディションを主催していた会社の
養成所に特待枠で入所することになり
まだ見ぬ新しい世界の幕開けに期待も
より一層膨らんでいました。
いよいよ上京。
そして養成所生活が始まると
見たことのない機材、設備、
名だたる講師陣を目の当たりにし、
青年は興奮を抑えられませんでました。
更に月に1度、講師陣の前で実力を
披露し、それが審査をされて
順位付けられるというものがある。
それを知った青年は気合も十分で
"絶対に負けない。"と意気込むのでした。
その意気込みが自分の描いた希望を
自ら打ち砕くとも知らずに。
青年は1度も自分の名前の上に
人の名前を書かせなかったのです。
初めて1番になったときは
それはそれは喜びました。
自分はこっちでもやっていけると。
しかしそれが2回、3回、4回、と
続くと青年の気持ちは少しずつ少しずつ
変わっていきました。
どれだけサボっても1位は変わらず、
すごいね!すごいね!とチヤホヤされ、
職員からは特別扱い。
努力すればするほどに、その扱いは
エスカレートしていきました。
上京するときの期待が大きかった分、
全てを否定された気になった青年は、
バカバカしくなり遂に養成所を
辞めてしまうのでした。
つづく